ボンブの戯言1回目です。
1回目はIT業界に入った後によく問題となるうつ病問題です。私の人生を狂わせてくれた1番大きな問題でもありました。うつ発症後は、本当に笑顔になるまで半年、何にもおびえず外出できるのに半年、そこからお賃金を得られるまで1年。「普通」といわれる生活を取り戻すのに約2年をかけ、5年を超えた今でも病院とお薬のお世話になっています。
そんな、恐ろしい「うつ」について自身の経験と聞いた経験を元に記載していきたいと思います。
IT業界にうつ病は多い?
「IT業界はうつが多い」まことしやかに囁かれています。私の経験からもIT業界はうつは少なくない印象です。昨今は労働環境の改善もあり、周りでなった報告は少なくなりましたが、2000年台あたりは発症する人が多かったイメージがあります。
そんな、IT業界で「うつ」が多いは本当かな?と思いますが、正式な記録は見つかりません。あくまでIT隆盛期の新3K(「きつい、厳しい、帰れない」)のイメージからでしょう。
うつ患者の直接的な調査ではありませんが、厚生労働省に掲載されている過労死等の労災補償状況の精神障害の労災補償状況をみてもIT業界(ここでは情報通信業を見ていますが・・・)が特筆して多いとも言えない状況です。
とは、言いつつも、エンジニアという職業が、鬱になりやすいと感じるのも事実です。自分の経験も踏まえて、うつになりやすかったタイミングと逃げ方について、エンジニアの視点から私の思うところを語っていきます。
うつになる原因(年代)
新人時代~数年程度
エンジニアになってから1つ目のターニングポイントかなと考えています。私の時代は、情報処理未経験者でも、エンジニア採用が当たり前の時代でしたが、「現場配属!ハイ、働いて!」が当たり前だったように記憶しています。私は数週間の研修がある優良な会社でしたが、配属後はほぼ一人でこなしつつわからなければ聞くスタイルでした。大変な時代ではありましたが、趣味のパソコン好きが高じて楽しく働けていました。しかし、IT好きでも何でもないような同期たちは、このタイミングで「うつ」とまではいかないまでも、脱落していく人も多かったです。いきなり「社会人」「技術」という知らないプレッシャーに耐えられない人も多かったのではないでしょうか。
2021年の現在は、情報系大学出身者を採用するケースが多い傾向にありますが、新人教育に携わっていると「現場の技術レベルが高く追いつけない」「学生時代のやり方や手法とまるで違う」「時間をかけられない(残業ができない)」「コロナでリモートワークメインで人間関係が構築できない」などの理由で、脱落される若人たちが多い印象を受けます。
この辺りは、自身の考えも必要ですが、先輩社員からのフォローが重要になってきます。
私のような無能が生き残れたのも、残業に寛容というのが性に合っていたのでしょう。今の時代にIT業界に突っ込まれてたら即脱落組の自信があります。
20代~30代
新人は卒業し、中堅社員と言われる部類ですね。ある程度基礎はわかり、自分の業務はこなし、後輩を育成し、人によってはプロジェクト単位でチームを引っ張っていく世代です。責任範囲が増え、能力も如実に結果として現れるためプレッシャーが大きくなります。
この辺りから、常識が通用しない技術問題や案件対応が増えていきます。私も、経験にそぐわないレベルの技術対応やマネジメントをやり始めたあたりでした。
ここで、折れてしまう原因としては、「キャパシティ以上の問題にぶち当たりどうしようもなくなった」「出来ると思っていたレベルが低すぎた」「毎日が激務」あたりでしょうか。また、顧客対応や上司からの叱咤から板挟みに陥る可能性も高いです。
このような問題とともに会社の業務に飽きた、他の世界をみたいなどで転職者が多い時期でもあります。
この時期は、個々人の能力よりもチームワークや会社の体制の在り方が非常に重要かと考えています。
40代~50代
課長、部長などの役職が付き複数プロジェクトの責任者が当たり前になってきます。また、会社経営に絡むため、社長・執行役員からの難題に対応しつつ、課員のフォローアップ、営業調整、顧客対応と複数の業務内容をこなさなければなりません。
といいつつも、ここまで生き残ったエンジニア職(もしくはエンジニア畑出身)で仕事でうつになる人は僕はみたことがありません。すでに多くの難関を乗り越えて、回避方法も熟知しているからでしょうか、「仕事」の範疇はみなさんこなしている印象です。
ここで心を折れるパターンとしては、上記のような激務に加え、「自身の病気」「親の介護」「子どもや配偶者の問題」などのプライベートの問題が重なり、耐えきれなかった方が多い印象です。
うつになる原因(環境)
なんやかんや真面目が多い
エンジニアがうつになりやすい原因として「真面目」が多いからだと思います。ここでいう真面目は、「勉強ができる」などの真面目ではありません。「几帳面」「自分の責任と感じる」という意味での真面目です。こういったものは、「技術を詳しく知りたい」「1つの不明確さが大トラブルを引き起こす」などの技術好きや過去の経験からそうなってしまう方が多いと感じます。
エンジニアの仕事では、取捨選択したり、個人の責任ではどうしようもないパターンが多く存在します。そんな時に、「無駄な労力を割いてしまい几帳面な仕事をしたり」「失敗などを自分の責任と過剰に感じる」と心が折れてしまいます。
不真面目が良いわけではありませんが、必要以上の真面目さは自分自身をころしていきます。
過密なスケジュールと人月の神話
過密な要求とスケジュールに心が折れてしまうパターンです。ITのプロジェクトで、安心できるほど猶予がある仕事というのを会社員のときに経験したことがありませんでした。常にギリギリかもしくは足りないだろ。というスケジュールありきでした。もはやスケジュールとは言えない、納期ありきの逆算から導き出したものをスケジュールとして定めるパターンが多いのではないでしょうか。
それが、複数案件並行・区切りがなく年中続くケースも珍しくないでしょう。
技術不足という点もあろうかと思いますが、仕事はチームで行うものです。常にベストなチーム(人員)を確保できればいいのですが、まず不可能です。人員不足が露呈して追加要員を確保しても、漫画のように「俺たちが来たからにはもう安心だっ!」の王道も存在しません。
私たちエンジニアたちは、50年たとうとする今もタールの沼から抜け出せていないのです。
~人月の神話から引用~
大規模システムプログラム開発は、過去十年以上もの間そうしたタールの沼のようなものだった。そして、多くの強大な獣たちが、その中へ乱暴に突き落とされてきた。たいていは稼働システムを作り、這い上がってきたものの、目標とスケジュール、それに予算にかなったものはほとんどなかった。規模の大小、また大量動員あるいは少数精鋭であろうとも、開発チームは次から次へとタールでがんじがらめになってしまう。問題を引き起こす原因は、一つだけではないように思われる。原因が一つだけなら、足のどれか一本くらいはタールから抜けるはずだ。
押し寄せる最新技術とバグと障害
スケジュールと似たところもありますが、IT業界はやはり廃り流行の流れが早いです。また、バージョンアップなどでも新機能・機能変更もざらにあります。
それに加え、予期していなかったバグ(不具合)や突発な障害が発生した場合、常に全力で対応しなければなりません。土曜日、日曜日、夜間関係なくです。
常に学び続け、問題がある場合は常に対応する、そんな生活に心が折れるパターンの方も多いように感じます。
伸びない納期
一度決定した納期が覆るときは、プロジェクトの失敗とみなされるくらいのレベルに感じてしまうのは私だけでしょうか。納期は絶対、徹夜だろうが家に何日帰れなくとも完遂しなければならない。
そんなプレッシャーの中、先ほどのような対応に心が折れる人も多いと感じます。
周りが敵だらけ
プロジェクトを推進していると、どうしても譲れない・対応できない・無理なお願いをするなどで、同じ目標に向かうステークホルダーなのに敵になってしまう場合があります。
敵はお客様だけではありません。BP、プロジェクトメンバー、自社エンジニア、営業、上司など自分以外のすべてが敵になり四面楚歌状態になってしまい耐えきれなくなるパターンです。
私がうつになった原因でもあります。今から、振り返ると敵ではなかったのかもしれませんが、何もかもがうまくいかず疎外感を感じてしまっていたのかもしれません。そんな時、人の心はいとも容易く砕け散ります。
うつになったらどうしたらいい?
まずは心療内科、メンタルヘルスへ
個人的になりますが、うつっぽいと感じたら心療内科、メンタルヘルスを受診しましょう。投薬も賛否両論ありますが、身体への副作用は大きいものの気持ちはかなり楽になりました。
当時の私は、メンタルヘルスなどの選択肢はなく、「ホームに飛び込めば楽になれる。しかし仕事がある・・・」の狭間で生きている状態でした。妻の勧めで受診しましたが、そういった友人やパートナーがいない方は、まずいと思ったらすぐに受診してください。微々たる費用で命が守れます。
また、使ういかんにかかわらず、診断書を貰っておきましょう。
逃げる(別部署に異動する)
うつの原因がプライベートではなく、労働環境の問題であるならが積極的に逃げるべきだと私は考えています。無責任でもいいので逃げましょう。
ある程度大きな会社であれば、複数の部署があります。エンジニア職でなくとも働ける部署はあるでしょう。もしくは、エンジニアでも別部署が多数存在する会社さんもあるでしょう。
うつの重さにもよりますが、別部署への異動願いを出すのは有効です。
逃げる(休職する)
働けないほど重たいなら、休職しましょう。会社員なら傷病手当をもらいながら休めます。1年6か月も休めます。給与全額は無理にせよ、暮らせるくらいは貰えるでしょう。
一旦休んで、心が回復しだしたら再度復帰するか、辞めるか選択しましょう。
逃げる(別業界に転職する)
うつの原因がはっきりしており、それが会社組織やIT業界特有の問題であるならば、別業界へ転職してしまうのも1つの手です。別のIT会社であれば、ある程度経験があれば困らないですし、別業界でも未経験から働けるものはいっぱいあります。
IT業界にいると、「スキル=その人の価値」という感覚に陥りやすいですが、生きるだけれであればどうとでもなります。
逃げる(退職する)
私が選択した道です。当時は、起き上がることすら苦痛に感じていた私は、すべてを投げ去って決別したかったのです。会社を辞めるのを引き留める権利は会社にありません。二か月前に報告するなどの礼儀も忘れてください。民法で2週間前と決められているなら、有給をとればいいのです。あなたの人生はあたなが決められます。
円満退職はできませんし、収入がなくなるため安易に進められませんが、雇用保険やセーフティネットも色々あるので選択肢の1つにしてはいかがでしょうか。
うつになった後もなぜIT業界に舞い戻るのか?
なんかかんやITが好き
エンジニアのうつ経験者によくあるのが、退職などを経てまたIT業界に戻ってくるパターンです。
エンジニアって良くも悪くも、ITや技術な好きな人が多いからではないかな?と感じています。私もITが好き、だけど会社員に戻るのはちょっと・・・・という思いから個人事業主という形でIT業界へ戻ってきました。
労働環境と人間形成が問題なければ、自分をどん底に追いやった業界であっても、ITという魅力的なものに、携わりたい気持ちのほうが強い。そんな思いからエンジニアを続けられる方が多いと考えています。
したいことがない
こちらは、友人の例です。なんとなくIT業界に入って、なんとなく卒なくこなし、ある程度いろいろなことがわかる人材レベルである。そんな状態から、他の未経験や知らない分野に飛び込むのはちょっと・・・。な考えから同じ業界に戻るパターンです。
私にも言えることですが、安易に戻ってしまうとまた激務に巻き込まれ、再発・退職コンボになるパターンでもあります。
休職からの復職も含めて、なんとなく戻るのであれば、せめて戻る環境を自身で取捨選択する余力は持っておきましょう。お金の関係などもあるので難しいところですが、うつを再発してまた働けなくなるパターンは可能な限り避けるべきです。
さいごに
「うつ病は心の弱い人がなるもの」という考えも最近は薄くなってきたように感じますが、以前の私もこのように考えていました。また、うつ病を経験してから、心の強い弱いの問題ではないと考えるようになりました。
今は「うつ病は環境に心のキャパシティが耐えられないときになるもの。そして治らないもの」という考えです。新入時代から激務なことは多々ありましたが、私の心を折った最終的なものは、激務でなく人でした。(もちろん逆の人もいるでしょう)
結局のところ、業務の難しさ、業務量、人間形成(外部も内部も)含めての環境に耐えきれないときに、発病する病気という考えです。また、一度発病すると完治はせず、ふとした瞬間に容易に再発してしまう病気でもあります。
初めてのときは、自分ではなかなか気づけず、ゆでガエルの如く少しずつ蝕まれていきます。今は、自分と家族を守るため、再発しなように、自分の力と責任が及ぶ範囲でエンジニアという仕事を続けています。
仕事は残業が無しで考えたとしても、1日の起きている時間の半分を占領しているので、精神的に合わないと感じれば逃げるという選択は必ず必要ですね
あらためてしみじみとそう感じさせられました
もちろん辞めたその後、上手くいくかどうかはわかりませんが、いろんな方を見てきた自分でも健康を犠牲にする仕事などは無いと断言できます
凄い良記事でした。
ありのままが書いてあって、就活中の大学生、転職を考えている方達に一度でも目を通して欲しい記事なのかなと思いました。
というか全社会人に一度は読んで欲しいですね。。。
素晴らしかったです。
少し目頭が熱くなりました。
これからも頑張ってください。
他の記事も期待しております。
いつもありがとうございます。